インスタントコーヒーが無くなる!?異議あり!
長年親しまれてきた「インスタントコーヒー」が消滅するらしい。
といっても、お湯に溶かして飲む「インスタントコーヒー」自体が無くなるのでなく、
その呼び方を変えるとのこと。
日本ネスレから《レギュラーソリュブルコーヒー》に名称に変更するという発表がありました。
「ソリュブル」は「溶ける」という意味。
《レギュラーソリュブルコーヒー・「ネスカフェエクセラ」に。》
日本ではダントツ多くに飲まれているソフトドリンクがコーヒーなのですが
一口にコーヒーと言っても大きく3つに分けることができます。
ひとつは当店のような焙煎店が提供する『レギュラーコーヒー』。
コーヒーの生豆を焙煎して、粉に挽き、お湯で濾して飲むコーヒーです。
もう一つは『缶コーヒー』。
一般的に工業用の豆を焙煎して抽出したものです。
ちなみ前述のレギュラーコーヒーではブラックが主流の中、
缶コーヒーに甘いものが多いのは、
保存料の味を分からなくするためにミルクや砂糖を必要とするからです。
銘柄にもよりますが、
缶コーヒー一本にスティックシュガー3本分が使われていると言われています。
飲み過ぎは注意です。
3つ目は、お湯を入れて粉末を溶かす『インスタントコーヒー』。
これはレギュラーコーヒーで使用する「アラビカ種」のワンラック下の
苦味が強い「ロブスタ種」をメインに使用して抽出した濃いコーヒーを
フリーズドライにして粉末にしたものです。
戦前に日本で開発されものなのですが、
残念ながら当時の日本ではヒットせず、海を渡ってアメリカでブレーク。
日本では製造方法の特許申請していなかったので、
アメリカ(ネスレ社)のものになってしまったという飲み物です。
皮肉にも太平洋戦争でアメリカ軍がいつでもどこでも飲めるコーヒーとして愛飲し、
一気に全米に広がったとされています。
「インスタントコーヒー」はネスレ社の商標登録された名称。
その呼び名を日本ネスレが変更すると発表したのです。
ちなみに「インスタントコーヒー」は売れ行きがここ数年伸び悩んでいます。
対照的にレギュラーコーヒーの需要は増えており、その流通量は90年代後半に逆転。
その後の差は開く一方。
ここからは個人的に私が感じていることを書きます。
ネスレ社が作り続けて認知を広げた「インスタントコーヒー」は、
同時に「美味しくない飲み物」というイメージも不本意ながら広げる結果になってしまいました。
その自らが作ってしまった負のイメージを払拭するために、
日本中に浸透した呼び名を封印し、新たな名称を付けたように思えます。
『インスタントコーヒー』⇒『レギュラーソリュブルコーヒー』。
ここで大いに気になるのが『レギュラー』を名称に付けたことです。
これでは消費者が通常の「レギュラーコーヒー」と勘違いして、
従来の「インスタントコーヒー」を買ってしまうんじゃないかと心配になります。
今まで国内の焙煎店が努力して培ってきた
「レギュラーコーヒー」=「美味しい」というイメージに
長年インスタントコーヒーを作ってきた日本ネスレ社が便乗しようとしているのかと。
今までやってきたことにネスレ社は自信や誇りを持っていないのかと聞きたくなります。
そう感じてしまう一端は、日本ネスレ社の説明が、
『従来のインスタントコーヒーの味を超えた美味しさのインスタントコーヒーを近年は作っているので、
もはやこれはインスタントコーヒーと呼ぶにはふさわしくなく、新しい名称に変更することにしました。これから『レギュラーソリュブルコーヒー』といいます。」
という唐突感と強引さを感じさせるものだったこともあります。
この呼び名が定着し、近い将来「インスタントコーヒー」が死語になるかはわかりませんが、
日本ネスレのこの仕掛けが、その後どう推移するか静観していきたいと思います。
それにしても「ソリュブル」って言いにくい。(笑)