国別コーヒー豆の特徴
【ブラジルのコーヒー豆の特徴】
《国内の生産状況》
生産量、輸出量ともに群を抜いた世界一の実力を誇るブラジル。コーヒー発祥の地とされているエチオピアから苗木が渡ったのは約300年前の1727年。その100年後に世界最大のコーヒー生産国となった。全体的に品質が高く生産の7割がアラビカ種。ここ数年国内でのカフェブームの影響でバリスタを目指す若者が増えており、農園は生産量だけでなく、高品質の豆を栽培することに力を入れている。
《生産処理方法》
90%が実をそのまま天日乾燥してから果肉除去という『ナチュラル製法』。シンプルなだけに処理中の不具合が直接品質に反映されるため、豆の扱いにはかなり気を付かっている。これがボディと甘みが豊かな味わいにつながっている。
《等級付け》
豆のグレードは大きく分けると「豆の大きさ」、「欠点豆の少なさ」、「カップテスト」の3段階で決まる。欠点豆は少ない方からNo.2~8と格付けされている。
《テイスト》
日本で最も多く流通している豆なので、安心感のあるテイスト。ブレンドのベースにもよく使われている。やわらかなボディと透明感のある後味、酸味と苦味の調和のとれたバランスのいいものが多い。深焼きすると強い苦味がでる。〈中焙煎〉と〈中深焙煎〉がオススメ。
【コロンビアのコーヒー豆の特徴】
《国内の生産状況》
多様性に満ちた地形と気候条件により、地域によって豆の味わいが異なるのが面白い。ほとんど標高の高い地域で栽培されているにもかかわらず、生産量はブラジル、ベトナムに次いて世界第3位。1732年にはじめてコーヒノキが植えられ、1927年に「コロンビア国立コーヒー生産者連合会」が設立されてから一気にレベルが向上した。国民の27%がコーヒー栽培に関わっているが、栽培農家のほとんどは小規模。連合会から派遣される農業アドバイザーの元、品質にこだわった栽培をしている。
《生産処理方法》
完熟した実だけを摘み取る伝統的な農法で収穫。清算処理方法は「果肉除去」→「水洗い」→「乾燥」の『ウォッシュド製法』。急な斜面で栽培している農園が多い為、天日干しする場所が少なく、農家の屋根を利用して乾燥させていることが多い。
《等級付け》
スクリーンサイズで格付け決定される。6.75mm以上の大粒の豆は「スプレモ(SP)」5.5mm~6.5mmの大きさのものは「エクセレソ(EX)」。この2つはグレードが高い豆として日本にも大量に輸入されている。
《テイスト》
完熟した豆だけを摘み取ったコーヒーは甘みも芳醇で柔らかなコクを持つ。強すぎない酸味の中にトロピカルフルーツのような風味がある。薫りとコクのバランスが良いマイルドコーヒー。〈中深焙煎〉と〈深焙煎〉がオススメ。
【グアテマラのコーヒー豆の特徴】
《国内の生産状況》
国土は日本の約3分の1だが、中米ではメキシコに次いで生産量が多い。1750年に
修道士によって苗木が持ち込まれ、1860年代に本格的に栽培が始まった。現在でも古くからある農園が多数残っている。1969年発足のグアテマラ全国コーヒー協会「アナカフェ」が中心となって生産者をバックアップしている。ほとんどが山の斜面で栽培されて、シェードツリーという日陰を作る背の高い木の下で栽培されるのが特徴。ブレンドのベース豆としても重宝されている。近年はスペシャルティーコーヒーの生産に力を入れており、農園ごとの差別化が進んでいる。
《生産処理方法》
「果肉除去」→「水洗い」→「天日乾燥」の『ウォッシュド製法』が多い。大規模農園は水洗設備を持っていて各自で水洗する。小規模農園では生産処理場をいくつかの農園で共有。自前の生産処理場も持つのが目標でもある。
《等級付け》
栽培する標高によって格付けされる。標高1300m以上が「ストリクトリー・ハードビーン」(SHB)。1200~1350mが「ハードビーン」(HB)900~1050mが「エクストラ・プライム・ウォッシュド」(EXP)。標高が高い方が上級。
《テイスト》
甘みがありフルーツのような薫りで賞賛されている。苦味は軽快で飲みやすく、ほど良い酸味も味わえる芳醇なコーヒー。〈中焙煎〉と〈中深焙煎〉がオススメ。
【エチオピアのコーヒー豆の特徴】
《国内の生産状況》
世界のコーヒーの原産国といわれるエチオピアは、国土の大部分が山岳地帯に覆われ、現在もその一部は野生の樹木から収穫されている。ほとんどが小規模農家だが、国民の5人に1人はコーヒー栽培に携わっている。国民はコーヒーをよく飲むため、全体の40%は輸出されず現地で消費される。それでも輸出品目として国内最大でその割合は全体の約40%。
各地で収穫された上質の酸味と甘み、スパイシーな薫りの「モカ」として輸出されている。
《生産処理方法》
実をそのまま天日乾燥して果肉除去する『ナチュラル製法』が主流。ただし、「イルガチェフェ」は、果肉除去→発酵→洗浄→乾燥の『ウォッシュド製法』。レモンのような爽やかさが伴う。欠点豆の除去が大変で手がかかるがその分美味しいので、「コーヒー豆の貴婦人」
と呼ばれている。
《等級付け》
伝統的な「ナチュラル製法」は未完熟などの欠点豆の混入が多い。そのため欠点豆の少ないものから「グレード1~9」と分類される。輸出されるのはグレード4以下の上質なもの。
「モカイルガチェフェのグレード1」はモカの王様。
《テイスト》
古来の製法で処理されるため、コーヒー本来の味を楽しむことができる。不揃いな見た目に反するフルーティな酸味と上質な甘い余韻を残す。「モカ」は日本でも大人気の銘柄。ピーチやマスカットのようなスッキリとした香味が広がる「モカイルガチェフェ」は世界的に高値で取引されている。〈中焙煎〉か〈中深焙煎〉がオススメ。
【ケニアのコーヒー豆の特徴】
《国内の生産状況》
ケニアの豆は全般的に品質が高い。特にヨーロッパで重宝され一級品として高値で取引されている。その理由は、早くから品種研究を重ねて整えた管理体制にある。種の段階から生産処理、テイスティングといった細部まで全てシステム的に管理。1年に2度雨季があり、収穫も年2回行われているが、11月から翌年にかけて収穫される方が評価は高い。
《生産処理方法》
各地で収穫された豆はまず「生産処理場」へ運ばれる。ここでコーヒーチェリーの色による選別後、更に水に浸して比重選別、水洗処理される。乾燥を終えた豆はドライミルに搬送される。
《等級付け》
スクリーンサイズ(豆の大きさ)で格付けされる。大きいほど高い等級となる。7mm以上は「AA」、6~7mm以上は「AB」。さらに豆の外観、抽出液の品質によるクラス分けもある。
《テイスト》
〈中深焙煎〉だと、カシスやブルーベリーのような甘みのある爽やかな味わい。まろやかな口当たりに上質の酸味なので芳醇さが感じられる。〈深焼き〉すると酸味が苦味に変わりビターでワイルドな飲み口になる。
【インドネシアのコーヒー豆の特徴】
《国内の生産状況》
オランダ人が1699年にジャワ島にコーヒーノキを移植したのがきっかけ。その後世界有数の生産国になった。1908年にサビ病の発生で木々が壊滅的な被害を受け、病害に強いロブスタ種(インスタントやソリュブルコーヒーに多く使用)に植え替えられた。その種現在は大半がロブスタ種であるが、一部では最高のアラビカ種を栽培する地域もある。スマトラ島の「マンデリン」がその代表格。深焼きが合う、苦味好きの定番銘柄である。マンデリンの上級豆が「ゴールデンマンデリン」。力強いボディが特徴。スラウェシ島の「トラジャ」も世界的に評価が高い。ジャコウネコの糞から採取される希少価値の高い「コピ・ルアク」も有名。
《生産処理方法》
他国では通常コーヒーチェリーの果肉を除去し、しっかり乾燥させてから脱穀するが、インドネシアでは乾燥時間が短く、半乾きのまま脱穀している。その後生豆を買ったバイヤーが乾燥させるのが定番。よって生豆の色が他国のものと違い、水分含量が多いため深い緑をしている。「コーヒー豆のオパール」と呼ばれている。
《等級付け》
サイズが大きく欠点豆が少ないものが等級が上とされる。サイズは多きものから「ラージ」、「スモール」と等級が決まる、欠点豆は少ない方から「グレード1~5」と5段階。
《テイスト》
重厚感あふれるどっしりした苦味が特徴。従来強い酸味のある豆だが、深い焙煎で酸味を苦味に変えて楽しむ。穏やかな風味もある。苦味好きな方やミルクを入れて飲む方にファンが多い。味のアクセントにコクを加えるため、ブレンドに使用しても美味しい。〈深焙煎〉がオススメ。
【ドミニカのコーヒー豆の特徴】
《国内の生産状況》
世界的にも美しい景色を誇るカリブ海のコーヒー産地。1700年にティピカ種の苗木が移植されたのが栽培の始まり。起伏に富んだ傾斜面で栽培が行われ、比較的大規模な農園で栽培が行われている。国全体の生産量が減る一方、国内消費が上昇しているため、年々輸出量が減っており、日本では希少な豆として扱われている。
《生産処理方法》
「果肉除去」→「発酵」→「洗浄」→「乾燥」の『ウォッシュド製法』が主流。収穫は完全に熟したコーヒーチェリーのみを摘み取り、水の中に入れて比重選別される丁寧な製法。
《等級付け》
「AA」、「AB」など豆の大きさで格付けされる。シバオ、バラオナなどの主要産地は産地名で取引されることが多い。高地ほど評価が高い。
《テイスト》
ブルーマウンテンに代表されるカリブ海産のコーヒーに共通するのは、すっきりとした飲みやすさとまろやかでフルーティな甘み。口の中で味の広がりと奥行きを感じる。〈中深焙煎〉がオススメ。
【ホンジュラスのコーヒー豆の特徴】
《国内の生産状況》
国土の3分の1が標高1000mを超え、コーヒー農園はこの山岳地帯に集中してる。最大の生産地はサンタイザベル地区。やわらかい酸味が特徴でアメリカに人気。同じ軟水の国である日本の水にも合うため、輸出量はアメリカに次いで2番目に多い。
《生産処理方法》
元々良質な樹木の品質を損ねないよう非常に丁寧に処理されている。『ウォッシュド製法』が主流。広い敷地で1週間ほどじっくり乾燥させる。湿気が多いので乾燥させるのが難しい地域。
《等級付け》
標高1200m以上が「ストリクトリー ハイグラウン」(SHG)、900~1200mが「ハイ グラウン」(HG)、600~900mが「セントラル スタンダード」(CS)標高が高いほど格付けは上。
《テイスト》
〈中深焙煎〉ではフルーツのような甘いフレーバーとキレのいい上質な酸味が味わえる。後味もスッキリしていて心地よい余韻が楽しめる。〈深焙煎〉では酸味が深い苦味に変わるので、深焙煎がオススメのブレンドに使用されることが多い。近年の評価が年々高まっている。
【タンザニアのコーヒー豆の特徴】
《国内の生産状況》
タンザニア産といえば「キリマンジャロ」(別名:タンザニア)。強い酸味とコク、そして甘い香りが特徴。名前はタンザニア北部にあるアフリカ大陸最高峰の山、キリマンジャロに由来。果実から生豆にする精製過程によって、水洗式アラビカ種コーヒーのみをキリマンジャロと定め、他の地域などで採用されている乾燥式のものは含まないと規定を設けています。日本ではキリマンジャロはブルーマウンテン、モカに次ぐ人気銘柄ですが、実は世界的にはそれほど知られていない。
《生産処理方法》
乾燥式は水資源の乏しいアフリカの旧来の精製過程で、天候など自然環境に左右され、品質にばらつきが出やすいのに対し、キリマンジャロのウォッシュド製法である水洗式は作業過程に機械を導入しており、品質を均一に精製できるという特徴がある。
《等級付け》
スクリーンサイズ(豆の大きさ)でAA~Cに分類され、AAが最高級品と格付けされている。
《テイスト》
薫り高く酸味の効いたコーヒーでキレがありアフリカを代表する味。酸味好きな方に根強い人気がある。深焼きすると、グレードの高いアイスコーヒーやエスプレッソに使用されるブレンドベースになるほどの重厚な苦味とコクが味わえる。〈中深焙煎〉と〈深焙煎〉がオススメ。