ネスレ日本がコーヒー協会を脱退。なぜ?
7月24日、業界最大手である「ネスレ日本」が「全日本コーヒー協会」を脱退しました。
理由は同社の顔であった「インスタントコーヒー」という名称を、
「レギュラーソリュブルコーヒー」に改めたことです。
私もこれが同社から発表された昨年(2013年)の夏、
個人的な見解を9月のブログに書かせてもらいました。
[いくらなんでもそれはないだろう]といった内容です。
(以下はそのブログの内容と重複します。)
簡単にまとめると、
自社がブランドとして長年使用してきた「インスタントコーヒー」の消費者イメージがいいものではないので、「レギュラーソリュブルコーヒー」に名称を変えます。
という発表をしたのです。
最近のインスタントコーヒーは製造技術も向上し、
もはやインスタントのレベルを超えているのでふさわしいし名前を付けました。
というのがネスレ社の説明です。
最近の珈琲需要の拡大によってレギュラーコーヒーは売り上げを伸ばしているものの、
インスタントコーヒーは2000年以降減少が続いています。
「インスタントコーヒー=美味しくない」というのは、残念ながら周知のとおり。
だからといって「インスタントコーヒー」改め「レギュラーソリュブルコーヒー」にします。
というのは無責任すぎないか?ということです。
消費者にそういった印象を植え付けたのは、他でもなくネスレ社です。
私としては、自社がこれまで作ってきたイメージを覆すような美味しいインスタントコーヒーを作り、インスタントコーヒー自体のイメージを変える努力を続けて欲しいです。
そしてもうひとつ。
『レギュラーソリュブルコーヒー』というネーミング。
コーヒーは大別すると『レギュラーコーヒー』と『インスタントコーヒー』、『缶コーヒー』に分けられます。
『レギュラーコーヒー』は「最高級のアラビカ種」がメインのコーヒー豆を使用し、
焙煎した豆を粉に挽いてお湯で濾して飲みます。
『インスタントコーヒー』は「工業用の豆」を工場で深く焙煎し、
それを抽出させてコーヒーの濃い液体を作りフリーズドライします。
それを細かく粉砕したものを瓶詰めなどの包装をし、
飲む時にはその粉末をお湯で溶解して飲みます。
この二つには製造方法から飲み方まで大きな違いがあります。
今回「インスタントコーヒー」に変わる「レギュラーソリュブルコーヒー」という呼び名には、
インスタントという文字は無くなった代わりに「レギュラー」というフレーズが加わりました。
ちなみに「ソリュブル」とは「溶かす」という意味です。
今回コーヒー業界を揺るがす問題になっているのがこの部分。
私も以前書かせてもらいましだが、
この「レギュラー」という言葉が消費者を混乱させるからです。
協会はこの『レギュラーの使用を認めない』との見解です。
定義が当てはまらないので当然。
協会は業界最大手を相手に素晴らしい判断をしたと思います。
10ヶ月前に直感的にこれはおかしいとブログに書かせてもらったことが、
今回協会が許可しなかった理由と一致していたこともあり、この判断はモーレツに支持します。
その判断を不服として、ネスレ日本は協会を脱退ました。
そこまでしてもインスタントコーヒーに「レギュラー」をつけて売りたいんでしょう。
私が焙煎しているのは「レギュラーコーヒー」。
インスタントコーヒーから「インスタント」が消え
「レギュラー」を名乗られたら消費者は混乱します。
ましてや、焙煎店が長年作り上げてきた「レギュラーコーヒー」の印象を
インスタントコーヒーに便乗されるのは言語道断。
それに対して全日本コーヒー協会は「NO!」を突きつけたんでしょう。
それに対して、我々のような焙煎店を含むコーヒー業界や消費者のことを無視して、
自社の都合だけで勝手にルールを変えてしまおうとするネスレ日本。
しかもそれが認められなければ脱退なんで、
周りを説得できる正論が無いと言っているようなものと思います。
ネスカフェアンバサダーでせっかくインスタントコーヒーのいい販売方法を見つけたんだから、
そっちの路線で堂々とインスタントを名乗って販売して欲しいです。
私の日々の仕事にはそんなに関係の無い話ですが、
背景が透けて見えるだけに黙っていられませんでした。